電子ピアノは調律不要。その理由と“ピッチ・音律”の仕組みを専門店が徹底解説
4月4日は「ピアノ調律の日」
― 電子ピアノはなぜ調律が不要なのか?プロが解説する“音律”と“ピッチ”の話 ―
4月4日は「ピアノ調律の日」。 国際ピアノ調律製造技師協会が1993年に制定し、日本では日本ピアノ調律師協会が1994年から実施している公式な記念日です。 4月(April)の頭文字“A”と、調律の基準音であるA(ラの音)が440Hzであることを掛け合わせた、音楽的にも意味のある日付になっています。
ピアノ調律の日は、アコースティックピアノの調律文化を広める目的で作られましたが、近年は電子ピアノの普及により「そもそも電子ピアノは調律が必要なのか?」という疑問を持つ方も増えています。
結論から言うと、電子ピアノは調律が不要です。 しかし、調律が不要である理由や、電子ピアノならではの“音律”や“ピッチ”の奥深い世界を知ると、電子ピアノの魅力がより立体的に理解できます。
この記事では、電子ピアノ専門店としての知見をもとに、 調律の日に合わせて「電子ピアノと調律の関係」をわかりやすく、かつ専門的に解説します。

電子ピアノはなぜ調律が不要なのか
アコースティックピアノは弦を張り、その張力で音程を作るため、湿度・温度・経年変化の影響を受けて音が狂います。 そのため、定期的な調律が欠かせません。
一方、電子ピアノは電子的に生成された音をスピーカーで鳴らす仕組みのため、 電源を入れた瞬間から常に正しい音程(ピッチ)で演奏できるのが最大の特徴です。
- 弦がない
- 張力が変化しない
- 気温・湿度の影響を受けない
この構造的な違いにより、電子ピアノは調律の必要がありません。
電子ピアノのピッチは「A=440Hz」が基本
電子楽器の多くは、初期設定でA=440Hzに設定されています。 これは世界的な標準ピッチであり、クラシックからポップスまで幅広く使われています。
しかし、電子ピアノの魅力はここからです。
電子ピアノはピッチ変更が簡単
電子ピアノでは、A=442Hzなどにピッチを変更することが可能です。 これはオーケストラや吹奏楽でよく使われるピッチで、アコースティック楽器と合わせる際に便利です。
ピッチ変更ができるモデルの例
- ヤマハ Clavinova(CLPシリーズ)
- ローランド LXシリーズ
- カワイ CAシリーズ
- アプリ連携が可能なエントリーモデルの一部
※ただし、エントリーモデルではピッチ変更機能が搭載されていない場合もあるため、購入時には要確認です。
上位モデルでは“音律”まで変更できる
電子ピアノの上位モデルでは、ピッチだけでなく音律(スケール)を変更できます。
通常のピアノは「平均律」で調律されていますが、電子ピアノでは以下のような音律に切り替えることが可能です。
- 純正律(合唱や弦楽器と相性が良い)
- 中全音律(バロック音楽に適した音律)
- ピタゴラス音律
- ヴェルクマイスター
- キルンベルガー など
例えば、チェンバロ音色に切り替え、ピッチを415Hzに設定し、中全音律で演奏すると、 バロック時代の響きをリアルに再現できます。
アコースティックピアノでは不可能な世界観を、電子ピアノなら簡単に楽しめるのです。
「音源と合わない」と感じたらピッチや音律が原因かも
YouTubeやアプリの伴奏音源に合わせて演奏したとき、 「なんだか音が合わない」と感じることがあります。
その原因は、
- 音源側のピッチが440Hzではない
- 音律が異なる といったケースが多いです。
電子ピアノなら、 ピッチを1Hz単位で調整したり、音律を切り替えたりして音源に合わせることが可能です。
これは電子ピアノならではの大きなメリットであり、 アンサンブルや録音、オンラインレッスンでも役立ちます。
主要メーカーの電子ピアノでのピッチ変更方法(簡易ガイド)
電子ピアノのピッチ変更は、上位モデルを中心にほとんどの機種で可能です。 ここでは、ヤマハ・ローランド・カワイの代表的シリーズを例に、一般的な操作方法をまとめます。
■ ヤマハ Clavinova(CLPシリーズ)のピッチ変更
ヤマハCLPシリーズでは、「マスター・チューニング」という名称で設定できます。
一般的な操作例
- [FUNCTION]または[MENU]ボタンを押す
- 「マスター・チューニング」または「Tuning」を選択
- ダイヤル/+-ボタンで 414.8〜466.8Hz の範囲で調整
- 決定して終了
※ CLP-600以降はディスプレイ操作が中心。 ※ SCLP(島村楽器モデル)も基本操作は同じ。
■ ローランド LXシリーズのピッチ変更
ローランドでは、「マスターチューニング」または「Master Tuning」で設定します。
一般的な操作例
- [MENU]ボタンを押す
- 「Tuning」または「Master Tuning」を選択
- 415〜466Hzの範囲で調整
- EXITで終了
※ LX705/706/708、LX5/6/9 など世代によってメニュー階層は異なるが、基本は同じ。 ※ GPカラー(島村楽器コラボ)も操作は共通。
■ カワイ CAシリーズのピッチ変更
カワイは 「マスターチューニング」 または「Tuning」で設定します。
一般的な操作例
- [MENU]または[SETTING]ボタンを押す
- 「Tuning」または「Master Tuning」を選択
- 415〜440〜444Hzなど、1Hz単位で調整
- 決定して終了
※ CA49/59/79/99、CA401/501 などで操作体系はほぼ共通。
まとめ:調律不要でも“音を整える自由度”は電子ピアノの魅力
4月4日の「ピアノ調律の日」は、アコースティックピアノの文化を大切にする日ですが、 電子ピアノの世界にも“音を整える”という奥深い楽しみがあります。
- 電子ピアノは調律不要
- ピッチ変更が簡単
- 上位モデルでは音律変更も可能
- 音源に合わせて細かく調整できる
電子ピアノは「調律がいらない楽器」ではなく、 自分の演奏環境に合わせて音を最適化できる楽器と言えます。
調律の日をきっかけに、電子ピアノの音の世界をぜひ深く味わってみてください。
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